01 あきの かりいおの とまをあらみわが衣出ころもでは つゆにぬれつつ 天智天皇てんじてんのう

現代語訳

秋の田んぼのすみある仮小屋は、草を編んで作った粗い造りなので、そこで番をする私の着物のそでは夜露にぬれていくばかりです。

超訳(現代風語訳)

収穫前にショボイ小屋で徹夜番をするのはきつい。つらい。しんどい。

解説

この歌の季節は秋。当時、収穫をひかえた秋になると、農民は田んぼのすみに質素な小屋を作り、夜の間はそのなかで稲を鳥や動物に荒らされないよう、徹夜で田んぼを守るため番をしました。

この歌の農民は、秋の夜にひとりきりで小屋にこもって朝が来るのを待っており、寒い夜に苦労して田んぼを守る姿が表現されています。

裏話

この歌は、百人一首のなかで唯一農民の姿を詠んだものです。作者の天智天皇は、農民が仕事にいそしむ姿を想像し、つらい農民に共感してこの歌を詠んだといわれていますが…

実は、この歌はもともと、奈良時代末期にできた日本最初の歌集「万葉集まんようしゅう」の「よみ人知らず」の歌です。それがいつしか天智天皇が農民の苦労を思いやって詠われたのだと言いつがれ、信じられてきました。

天智天皇てんじてんのう(626~671)

中大兄皇子なかのおおえのおうじといわれた皇太子時代、皇室をしのぐ勢力をほこった蘇我氏そがしをクーデターで倒し、第38代天皇に即位しました。また、都を奈良から滋賀県の大津に移しました。