10 これやこの くもかえるも わかれてはるもらぬも 逢坂おうさかせき 蝉丸せみまる

現代語訳

これがかの有名な、京から出る人も、京へ帰る人も、知っている人も知らない人も、逢っては別れ、別れてはまた逢うという、逢坂の関なんだなぁ。

超訳(現代風語訳)

逢坂の関は人が多いなぁ…

解説

この歌は、関所「逢坂の関」で、行き交う人々を前にして詠んだ歌です。

逢坂の関は、京都府と滋賀県の国境、逢坂山にあった関所のことです。関所とは、人や物の出入りを見張る施設で、交通の要所に設けられました。(ちなみに「逢坂」という言葉は、古典では「逢う」という場面で大活躍している言葉です)

逢坂の関を訪れた作者の蝉丸せみまるは、人々があわただしく行ったり来たりする様子に感心して、この歌を詠んだとされています。

関所の風景を題材にしていますが、人生そのものを詠んでおり「生きるということは出会いと別れを繰り返すものだ」というメッセージが込められています。

裏話

蝉丸は、あわただしい関所での人の往来を見て、出会いと別れを繰り返す人生を連想しました。

この歌で注目すべき点は、反対語を使った表現です。この歌には三組の反対語が使われています。

「行く」と「帰る」

「知る」と「知らぬ」

「別れる」と「逢う」

反対語を使うことによって、見知らぬ人々がすれ違い、忙しく通り過ぎていく様子を見事に表しています。

蝉丸せみまる(?~?)

伝説的な歌人。盲目の琵琶の名手だっという説がありますが、詳しいことは分かっていません。