06 かささぎの わたせるはしに おくしもしろきをれば ぞふけにける 中納言家持ちゅうなごんやかもち

現代語訳

冬の夜空に白々と天の川。七夕の夜には、かささぎが連なって天の川に橋をかけるという伝説がありますが、その伝説の橋にもたとえられる、この宮中の橋にも白い霜がおりています。その霜の白さをみると夜もふけたと感じます。

超訳(現代風語訳)

霜おりてる。はぁ~寒いはずだよ…。…あ、この霜の感じ、七夕の伝説とかけたらバズりそうじゃない?

解説

この歌は、冬の夜、宮中の橋に霜がおりている様子から、七夕の伝説を思い浮かべて詠んだ歌です。

七夕の伝説とは「織姫が彦星に会いに行けるように、かささぎが群れをなして飛び、天の川に橋をかけた」という伝説です。

かささぎはカラスの仲間で、カラスよりひとまわり小さい鳥です。おなか、肩、つばさの先が白いのが特徴で、空を飛ぶ姿を見上げると、ちょうどおなかの白い部分が目立ちます。

また、この歌が作られた奈良時代の都は平城京です。平城京の宮中の階段は「天にかかる橋」に例えられることがありました。宮中は天皇が住む場所で、尊いところと考えられたからです。

作者の中納言家持ちゅうなごんやかもちは、霜で白く染められた宮中の階段の美しさを、七夕の伝説で登場するかささぎの白さにたとえて、たたえたのではないでしょうか。

裏話

冬の歌に夏の七夕伝説…と少し季節がちぐはぐな感じがします。

しかし実際は、この歌が詠まれた冬の夜空のほうが、空気も澄んで星がきれいなので、天の川がはっきり見えるんですね。

ちなみに現代の7月7日は夏ですが、昔の旧暦では7月は秋でした。ややこしいですね。

中納言家持ちゅうなごんやかもち(718~785)

本名は大伴家持おおとものやかもち(中納言というのは官名)。三十六歌仙さんじゅうろっかせんのひとりで、奈良時代の和歌集「万葉集まんようしゅう」編集の中心人物ではないかといわれてます。

大伴家は古い由緒ある部門の一族で、父の大伴旅人おおとものたびとをふくめ、すぐれた歌人をたくさん出しています。